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「サウダーヂ」と「国道20号線」を見逃すな。

2012/1/26(木)晴れ

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富田克也監督「サウダーヂ」のことを知ったのは、確か菊地成孔のラジオ「粋な夜電波」だったと思う。山梨が舞台で、ブラジルやタイから来た移民と地元の日本人の土方、それにヒップホップが絡む話だという。どんな映画なのかさっぱり想像がつかなかったが、とにかく観てみることに。

何というかこれが、、、ただもう傑作としか言いようがない。どうしようもない地方都市の行き詰まりを描いている話なのに、とんでもないものを観てしまった高揚感がじわじわと湧いてくる。今の地方の現実、日本の現実を描きつつ、フィクションとしても最高に面白い話として成立している。社会派のドキュメンタリーでもなければ、娯楽映画でもない。笑うこともできるし、考えることもできる。観る人の受け取り方によっていろんな見方ができる、懐の深い映画だ。

「サウダーヂ」を観た後、前作の「国道20号線」も観に行った。「サウダーヂ」にも出ている伊藤仁が出てきた瞬間に、「あ、またアイツだ!」と笑いが込み上げてくる。パチンコと消費者金融のATMが立ち並ぶ国道の風景は、東京から30分も走ればどこにでもある光景だ。そこで展開されるのはろくに働きもせず、シンナーを吸ってブラブラするヤンキーカップルの日常。そんな話のどこが面白いのかと普通は思うのだが、サウダーヂほどの緊迫感はまだなく、ゆっくりと地盤沈下していくぬるま湯のダルさが心地良い。自分もだんだんこの街の住民のような気さえしてくる。

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そして昨日、「サウダーヂ」をもう一度観てきた。初回に比べると、すべてのカットがクリアで無駄がなくシャープに感じる。このシーンもヤバい、あのシーンももうすぐ来るぞ、、と余裕をもって楽しめた。ラッパーの田我流がアーケイドを歩くシーンで、既に宮台真司のポスターが貼ってあったことに初めて気づいたり。日本人の暗さに対する、ブラジル人の明るさも際立つ。今の100倍稼げるよと言われてブラジルから日本へやってきたのに、土方の仕事もなくなって祖国へ戻るブラジル人たち。タイにいる家族を養うために、日本を出られないタイの女の子。いつの間にか街から姿を消していく日本人の若者たち。夜の街はゴーストタウン化している。

この20年間経済成長が止まり、政治がまともに機能せず、膨大な借金を背負った国の現状、そこで生きる自分たちの現状がどんなものなのか、見て見ぬふりをしてきた自分に気づく。このどうしようもない現実からはじめるしかないということをまず認めなければ、文化も歴史もへったくれもない。今のこの国の最大の娯楽は、パチンコなのだから……。ほぼ日の糸井さんと佐々木俊尚さんの対談にもあったように、「当事者意識」をもったつくり手の嘘偽りのない表現だけが、僕らに真実を見せてくれるのだろう。

東京での公開は明日1/27まで、今後は全国を回っていく。今のところDVD化される予定はないようなので、まだ観ていない人はぜひ観て欲しい。

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